ロードバイクブームは終わった?|オワコン説を販売台数の数字で検証

結論
- 「オワコン」動画の多くは体感と伝聞だけで数字がありません。ブームは必ず終わり、1970年代アメリカでは1973年の1,530万台が1975年には700万台に戻りました。
- 日本のブームは2005年ごろから始まり、弱虫ペダルは増幅装置。コロナ特需は未来の需要の前倒しで、2024年の輸入スポーツ車販売はピークから25%減でも2011年ごろと同水準です。
- ブームの時は道が混み、敵視する人も増えます。ブームが去った今のほうが走りやすく、始めやすい。自分のペースで楽しめばいいというのが本音です。
YouTubeでは「ロードバイクブーム終焉の理由」「ロードバイクはオワコン」といった動画が、年に何回か定期的に伸びます。そこで私たちも作ってみました。ただし結論は予想と逆で、ブームなんかないほうがいい、です。業界のためにはよくないかもしれませんが、本気でそう思っています。よく語られる「理由」と、実際の数字を比べながら、その理由をお話しします。
Q. 「ロードバイクはオワコン」動画は何を言っている?
こうした動画をまとめて見て、構成を書き出してみました。すると、びっくりするくらい同じでした。
- つかみ:「最近ロードバイクに乗る人が減っていませんか?」
- ブームをさらっと振り返る
- 理由を並べる(ここが全体の大部分)
- 「でも自転車は楽しいですよね」とふわっと終わる
並べられる理由も大体同じです。多いものから挙げると、
- 価格が高い:105の完成車が15万円だったのに、今は30万円
- 規格が変わりすぎる:ディスクブレーキ化、スルーアクスル、電動変速
- 実用性が低い:荷物が積めない、タイヤが細い、段差に弱い
- メンテと置き場所:手間がかかり、部屋でほこりをかぶる
- 界隈がしんどい:Stravaやパワーメーターで数字のマウント合戦
- 道路環境と世間の目:危ない、マナーの悪い乗り手が叩かれる
- コロナ特需の反動:売れすぎて在庫が余った
- 若者離れと高齢化
ただ、ここには決定的に足りないものがあります。数字です。何年に何台売れて、今は何台なのか。それを言っている動画はほとんどありませんでした。全部が体感と伝聞です。体感は大事ですが、終焉と言い切るなら数字が要ります。
ちなみに、この手の動画が伸びる理由も分かりました。乗っている人は反論したくなり、やめた人は「そうそう」と頷きたくなり、まだ乗っていない人は「やっぱりな」と安心する。どの立場の人もコメントしたくなるようにできているんです。
Q. ブームはいつか終わるもの?
大前提として、ブームは必ず終わります。終わらなかったブームを私は知りません。終わるところまで含めてブームと呼ぶのだと思います。
1970年代アメリカの自転車ブーム
いい実例があります。1970年代のアメリカで、とんでもない自転車ブームが起きました。
| 年 | 販売台数 |
|---|---|
| 1971年 | 900万台 |
| 1972年 | 1,400万台 |
| 1973年 | 1,530万台(ピーク) |
| 1975年 | 700万台 |
たった2年で、ブームが始まる前の水準まで戻りました。
面白いのはここからです。このブームの原因はよくオイルショックだと言われます。ガソリンが高くなって車に乗れなくなったから、自転車が売れた、と。ところが、オイルショックが来たのは1973年の10月。販売はオイルショックの前にもうピークを迎えていたんです。順番が逆で、後から「あれが原因だった」と物語をくっつけたわけです。
さらに、このブームが崩れた時期に生まれたブランドがあります。キャノンデールが1971年、スペシャライズドが1974年、トレックが1976年。今の巨人たちです。崩れたブームの残骸から、今の業界が生えてきた。ブームが終わることは、そんなに悪いことではありません。
キャンプブームも同じ
自転車以外ではキャンプがそうです。オートキャンプの参加人口は2021年に750万人いましたが、2023年には600万人まで減りました。キャンプ用品の市場も2023年は803億円で、前年から15.3%減。この10年でいちばん大きな落ち込みでした。
面白いのは、「キャンプブームが終わって嬉しい、静けさが戻ってきた」という記事があることです。私と同じことを思っている人がちゃんといるわけです。
Q. 日本のロードバイクブームは弱虫ペダルのおかげ?
半分正解です。数字を見てみます。
- 『弱虫ペダル』の連載開始:2008年
- テレビアニメ第1期:2013年10月
- ロードバイクの数字が急に伸びたのが2014年、ピークは2017年ごろ。そのピークは2013年ごろのおよそ2倍
弱虫ペダルの効果は間違いなく本物です。ただし、ブーム自体は2005年ごろから立ち上がっていました。アニメより8年も前です。弱虫ペダルは火をつけたのではなく、すでに燃えていた火をあおいで長持ちさせた、増幅装置のような存在だったと思います。
Q. コロナでブームが来て、コロナ後に終わった?
これも、さっきのアメリカの話と同じで、順番が逆だと思っています。危機のときに自転車が売れるのは歴史的にずっとそうです。危機が趣味を生むのではなく、もともとあった需要が一気に前に出てくるだけです。
- シマノの自転車部門の売上は2022年に4,750億円で過去最高。2023年からは3,600億円くらいで落ち着いています。これを終焉と呼ぶ人がいますが、私に言わせれば未来の分まで先に売れただけです
- 日本の輸入スポーツ車の販売には、2011年と2020年の2つの山があります。2024年はピークから25%減りました
確かに減りました。でも、25%減った今の台数は、2011年ごろと同じくらいです。あのころ、みんな「ロードバイクブームが来た」と喜んでいました。同じ台数で、片方はブーム到来、もう片方は終焉。数字は同じで、気分が違うだけです。
Q. ブームが終わると困る?
ここからは完全に私の意見です。
正直に言うと、ブームが終わったらどうなるんだろう、という不安がよく分かりません。日本にいるなら、パーツは普通に手に入りますし、ヨーロッパの海外通販もちゃんと届きます。私が住んでいる東南アジアでは、届かないことがあります。理由もなく税関で止まって、そのまま出てこないこともあるんです。それに比べれば、贅沢な悩みだと思います。
そして、自分の趣味がブームになると、大体ろくなことになりません。
- あらゆるところが混む。 走る道も混むし、キャンプ場も取れなくなります
- 人が増えると、それを敵視する人が必ず現れる。 これが本当に鬱陶しいです
業界を考えればブームはいいのでしょう。でも私は、業界より自分が大切です。家族も友達もパートナーも、業界よりずっと大切です。利己的で申し訳ありませんが、これが本音です。それに、お金のかかる機材スポーツが、貧しくなっていく国で廃れていくのは、誰が悪いわけでもない当たり前のことです。
弱虫ペダルでブーム真っ盛りのころ、ショップで、初めての1台という感じの20歳そこそこの女性が、50万円を超えるヨーロッパブランドを買っていくのを見たことがあります。当時は30万円台で7kgのTCRが買えた時代です。正直、あまりいい感じはしませんでした。もちろん、買える人は買っていいんです。業界のためになりますし、中古で出てくれば、格安でいいものを手に入れる人も生まれます。だから文句は……ないはずなんですが、ちょっとあるのかもしれません。
まとめ:ブームが去った今こそ楽しみやすい
ブームは去った。たぶんそれは本当です。そのぶん路上の台数が減って、きっと走りやすくなりました。それで何も問題ありません。私たちが楽しく走れれば、それでいいじゃないですか。
ブームのときに始めてやめた人は、乗りたくなったらまた乗ればいい。これから始める人にとっても、ブームが去った今のほうが楽しみやすいと思います。価格は上がりましたが、分からないことはYouTubeで調べられますし、コメントで聞いてもらえれば答えます。自分のペースで、楽しく走ってください。
よくある質問
ロードバイクブームは本当に終わったのですか?
ブームが去ったのはたぶん本当です。ただ、日本の輸入スポーツ車の販売は2024年にピークから25%減ったものの、ブーム到来と喜ばれていた2011年ごろと同じくらいは売れています。終焉というより、落ち着いたと見るほうが実態に近いと思います。
ロードバイクブームは弱虫ペダルがきっかけですか?
効果は本物ですが、きっかけではありません。ブームは2005年ごろから立ち上がっていて、アニメ第1期(2013年10月)の後の2014年に急に伸び、2017年ごろにピークを迎えました。すでにあったブームを大きく長持ちさせた増幅装置だったと考えています。
ブームが終わった今からロードバイクを始めても大丈夫ですか?
むしろ今のほうが楽しみやすいと思います。路上の台数が減って走りやすくなり、日本ならパーツも普通に手に入ります。価格は上がりましたが、分からないことはYouTubeなどで調べられます。
動画で見る
この記事の元になった動画です。実際の動きは映像のほうがずっとわかりやすいので、ぜひあわせて見てください。