ロードバイクにスタンドや泥除けがないのはなぜ?|ツール・ド・フランスの安全ルール

結論
- レースバイクにスタンドがないのは、落車時に突き出たパーツが人に刺さらないよう、安全のために禁止されているからです。バーエンドのキャップも同じ理由で必須です。
- 泥除けは空力パーツ(フェアリング)の禁止に当たり得るうえ、クリアランスが狭く付かない構造。水しぶきやほこりは乗り物のレース全般に付き物です。
- レースで競うのは速さ。安全には最大限配慮しますが、要らないものは付けません。一方、雨の日の通勤なら泥除けはとても普通の装備です。
X(旧Twitter)で、こんな趣旨の投稿を見かけました。「ツール・ド・フランスの自転車にはスタンドも泥除けも付いていない。安全性を追求していると言いながら、結局は見た目と美学を優先しているだけではないか」。一見もっともらしく聞こえますが、レースの世界を知っていると「いや、それは逆なんです」と言いたくなる内容です。怒るためではなく、なぜプロのレースバイクにはスタンドも泥除けも付いていないのか、その理由を整理してみます。
Q. レースバイクにスタンドが付いていないのは危ないから?
逆です。安全のために、付けてはいけないのです。
レースでは、自転車の外側に向かって突き出しているものは原則として禁止されています。落車したときに、そのパーツが人に刺さったりしないようにするためです。集団で高速走行し、狭い道を通り、ときには10人以上がまとめて転ぶこともある世界なので、なおさらです。
- ハンドルのバーエンドには必ずキャップを付けなければなりません。えぐるように刺さる危険まで考えられているからです
- TTバーも集団で走るステージでは禁止です。タイムトライアルのステージで付いているのは、選手が1人ずつスタートして走り、混走しないからです
「走行中にスタンドが開いたら危険だという反論があるが、勝手に開かないスタンドくらい作れるはずだ」という主張もありましたが、前提が逆です。危険だから付けてはダメ、と決まっているのです。レースに限らず、一般参加のイベントでも大体は禁止されています。
Q. パンクや落車で止まったとき、自転車はどうするの?
地面に寝かせます。それ以外にどうしようもありませんし、それで困ることもありません。後ろにはチームカーなどの後続車両が走っていて、止まった選手や倒れた自転車がいることは当然考慮されています。
そもそも、レースをするあらゆる乗り物は、速さに関係のない、要らないものは付けないのが基本です。これはロードバイクに限った話ではありません。
Q. 泥除けを付けないのはダサいから?
これもまず、ルールの問題があります。
フェアリングの禁止
レースでは、空力を良くするために取り付けるカバー類(フェアリング)が禁止されています。オートバイでいうカウルのようなものです。泥除けはこれに該当する可能性があります。
そもそも付かない構造
レースバイクはタイヤとフレームの隙間(クリアランス)がかなり狭く、泥除けが付かない構造です。市販のロードバイクでも、しっかりフルカバーする泥除けが付かないものは多いです。
前の選手の水しぶきは?
雨の日は前の選手が巻き上げる水しぶきを浴び、視界も悪くなります。でも、後ろに跳ねる、視界が悪くなるという問題は、乗り物のレースならどれでも付き物です。雨に限らず、乾いた未舗装路ではすさまじいほこりが立ちます。そもそもレースは整備された道路で行われ、速度と効率が優先されます。
一方、一般の人が雨の日に自転車通勤をするなら、泥除けは実用品としてとても普通の装備です。後ろにぺろっとした短い泥除けを付けるだけでも、背中や首の後ろが泥だらけになるのをかなり防げます。レースと日常では、求められるものがまったく違うということです。
Q. ロードレースは安全より伝統を優先している?
これも実際は逆で、UCI(国際自転車競技連合)が安全のために何かルールを作ろうとすると、ファンも選手も大体は反対します。ヘルメットの義務化のときは、選手がボイコットまでしたほどです。
とはいえ、ヘルメットは今では絶対に必要です。年々、速度が本当に上がっていて、洒落にならない事故は今も起きています。
投稿の最後には「安全第一と語るのはその後でいい」とありましたが、そもそも乗り物のレースで、安全が「第一」だと言っている人はたぶんいません。安全には最大限に注意を払い、ルールや装備を整える。でもレースはレースで、競うのは速さです。
Q. 「便利に使う技術」も競えばいいのでは?
投稿では「ツール・ド・フランスが自転車技術の最高峰を名乗るなら、速く走る技術だけでなく便利に使う技術も競うべき」とも書かれていました。でも、それはレースではありません。やりたいなら、別でそういう大会をやればいいと思います。
乗り物に乗った人が2人いれば、レースが始まる。レースとはそういうものです。
まとめ
プロのレースバイクにスタンドや泥除けがないのは、美学のためではありません。
- スタンド:外側に突き出たパーツは、落車時に刺さる危険があるので禁止。止まったら地面に寝かせれば済みます
- 泥除け:フェアリング禁止のルールに該当し得るうえ、クリアランスがなく付かない構造。水しぶきやほこりは乗り物のレース全般に付き物です
- 安全性:安全対策にはむしろ選手やファンが反対してきた歴史があり、それでもヘルメットのように必要なものは取り入れられています
詳しくない人が勢いで書いた投稿かもしれませんが、レースを語るなら、まずレースのルールを調べてみると面白い発見があると思います。
よくある質問
ロードレースでキックスタンドが禁止されているのはなぜですか?
自転車の外側に突き出たパーツは、落車したときに人に刺さる危険があるからです。同じ理由でハンドルのバーエンドにはキャップが必須で、集団で走るステージではTTバーも禁止されています。
プロのレースで泥除けを付けないのはなぜですか?
空力を良くするカバー類(フェアリング)の禁止に該当する可能性があることと、レースバイクはタイヤとフレームの隙間が狭く泥除けが付かない構造だからです。速さに関係のないものを付けないのは、乗り物のレース全般に共通しています。
普段使いのロードバイクに泥除けは付けたほうがいいですか?
雨の日に通勤などで乗るなら、泥除けはとても普通で役に立つ装備です。後ろに短い泥除けを付けるだけでも、背中や首の後ろの汚れをかなり防げます。レースと日常では求められるものが違います。
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この記事の元になった動画です。実際の動きは映像のほうがずっとわかりやすいので、ぜひあわせて見てください。