長距離がキツいのは体力のせい?|首・背中・手の痛みの原因と対策、TTバーの裏技

結論
- 5時間くらいまでの長距離なら、心肺や脚の筋力は大きな壁ではありません。難しいのは同じ姿勢を何時間も保ち続けることです。
- 首・背中・手のひらの痛みは、同じ姿勢で体重を支え続ける静的な負荷が原因。正攻法は乗り続けて体幹のインナーマッスルを育てること(毎日50kmでも最低3か月)。
- すぐ楽になる裏技はTTバー。肘の角度を合わせると骨で上半身を支えられます。ただし頼りすぎると体幹の成長が遅れます。
「長距離を走ると体力が続かない」と感じている人は多いと思います。でも実際には、5時間くらいまでの距離なら、心肺機能や脚の筋力はそれほど大きな壁ではありません。長距離で本当に難しいのは、乗車姿勢を何時間も保ち続けることです。首の後ろや背中、手のひらが先に限界を迎えて走れなくなる。この記事では、その原因と、時間をかけて体を作る正攻法、すぐに楽になる裏技をまとめます。
Q. 長距離がキツいのは体力が足りないから?
長距離と聞くと体力勝負だと思われがちですが、実際はそうでもありません。路面状況や獲得標高で差は出ますが、5時間くらいの距離なら、呼吸を整えながら一定のペースでペダルを回し続けるだけで、意外とハードルは高くないんです。
無理に強く踏む必要もなく、しなやかなペダリングで十分です。踏まずに回す乗り方はペダリング入門まとめで詳しく解説しています。
では何が難しいのか。答えは、同じ姿勢を長時間保ち続けることです。
Q. 長く乗るとどこが痛くなる?
自転車にまたがったまま何時間も過ごすと、体の特定の部位に疲労がじわじわ溜まっていきます。
- お尻と手のひら:いちばん出やすい痛みですが、ポジションやフォームでかなり何とかなります(お尻についてはお尻が痛い原因と対策をどうぞ)
- 首の後ろ、背中の上のほう:こちらはフォームだけではどうにもなりません
この痛みは、筋肉を動かして使っているから出るのではありません。同じ姿勢で体重を支え続ける「静的な負荷」が原因です。そこに振動や路面の凹凸が加わるので、少しずつ痛みやしびれが出て、集中力も落ちていきます。
手のひらのしびれ
特に手のひらのしびれは、シフトチェンジがしづらくなるほど強く出ることがあります。ロードバイクだとブラケットをずっと同じ角度で握り続けるからです。MTBはグリップの位置が近く、また少し違う疲れ方をします。
グローブやパッド入りのビブで多少は和らぎますが、それだけでは根本的な解決になりません。脚はまだ回せるのに、首や背中が限界を迎えて走れなくなる。これが長距離のいちばんの敵です。
Q. 正攻法は?
乗り続けて体幹を育てる
いちばん確実なのは、とにかく乗り続けることです。毎日のように自転車に乗っていると、体幹のインナーマッスルが少しずつ育っていきます。目に見えないうえに、なかなか育たない筋肉です。
育ってくると、上半身を腕などで支えるのではなく、お腹側から支える割合が増えていきます。そうなると手や首にかかる負担がかなり減り、痛みが劇的に軽くなります。
プロ選手の体を横から見ると、お腹まわりが分厚く、角度によってはお腹が出ているように見えることがあります。あれは太っているのではなく、体幹で上半身を支える力が強い証拠です。長時間のレースやトレーニングを繰り返すうちに、自然とその形になっていくわけです。
ポジションとストレッチも見直す
体幹づくりだけでなく、サドルやステムの長さを合わせ直すだけでも結構変わります。前傾がきつすぎると、そのぶん首や肩に負担が集中します。無理のない範囲でフィッティングを見直すのも大事です。考え方はポジションとフォームの出し方にまとめています。
乗る前のストレッチも、地味ですが効きます。
時間がかかることは覚悟する
ただし、この方法には時間がかかります。毎日50km以上乗っても、最低3か月は必要だと私は思います。個人差はもちろんありますが、すぐに効果が出るものではありません。焦らず続けることが大切です。
Q. すぐに楽になる裏技は?
完全な解決策ではありませんが、体への負担をかなり減らせる方法が2つあります。両手放しと、TTバーの導入です。
両手放し(※日本の公道ではやらないでください)
上半身を完全にフリーにできるので、首や肩、腕の疲労を一気に休ませられます。ただし、そのぶん体重がお尻に集中しやすく、サドルの痛みが増すおそれがあります。あくまで上半身を休める手段と割り切るものです。
そして、日本ではやらないでください。手放し運転は道路交通法に触れるはずですし、とっさにハンドルを戻せないと本当に危険です。海外で見通しのいい直線、交通量の少ない場所に限った話ですが、それでも路面のギャップがあると本気で慌てます。
TTバー
TTバーはエアロ効果を狙う道具というイメージが強いかもしれません。でも長距離では、それ以上に姿勢を楽にする道具として優秀です。
肘の角度をうまく調整すると、筋肉で我慢するのではなく、骨で上半身の重さを支えられるようになります。骨格で荷重を受ける感覚が身につくと、手や肩、上半身を支える面での疲労がかなり減ります。エアロポジションを意識する必要はなく、まずは楽に体を預けられる角度を探すのがポイントです。
注意点もあります。
- ブレーキから手が離れる姿勢なので、混雑した道では使わないほうがいいかもしれません
- TTバーに頼りすぎると、体幹(腹圧)の成長が遅れます
逆に言えば、郊外やかなりの田舎での通勤などにはいいのかもしれません。うまく使うと実に楽です。とはいえ、どちらもあくまで裏技です。
まとめ
長距離の本当の難しさは心肺機能ではなく、同じ姿勢を保ち続けるための筋持久力と支持力です。正攻法で体幹をじっくり育てながら、必要に応じてTTバーなどの道具で負担を分散させる。この2つの組み合わせが、長く気持ちよく走り続けるための現実的な方法だと思います。焦らず、自分の体の反応を見ながら調整していってください。
よくある質問
ロングライドで首や背中が痛くなるのはなぜですか?
筋肉を使いすぎているからではなく、同じ姿勢で体重を支え続ける静的な負荷が原因です。振動や路面の凹凸も加わって、少しずつ痛みやしびれが出てきます。フォームだけでは解決しにくく、体幹で上半身を支えられるようになることが根本的な対策です。
体幹が育って楽になるまでどれくらいかかりますか?
個人差はありますが、毎日50km以上乗っても最低3か月はかかると考えています。すぐには効果が出ないので、その間はサドルやステムの見直し、乗る前のストレッチも合わせて行うのがおすすめです。
TTバーは長距離に向いていますか?
エアロ目的だけでなく、骨で上半身を支えて楽になる道具として優秀です。ただしブレーキから手が離れるので混雑した道では避け、頼りすぎて体幹の成長が遅れないように、あくまで補助として使ってください。
動画で見る
この記事の元になった動画です。実際の動きは映像のほうがずっとわかりやすいので、ぜひあわせて見てください。